契約

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泣きたい衝動にかられていると、ドアをノックする音が聞こえた。 「誰も居ません」 私はドアの向こうの人に言った。 しかし、そんな嘘は通用するわけはない。 「居留守にもほどがある!」 と、先生が入って来た。 「一人反省会してるから、出てって」 「反省会って、今日中に終わるの?」 先生が私の前にしゃがむ。 「・・・終わるかもしれないじゃん!!」 「逆ギレかよ」 先生が笑った。 どうせ、反省ばっかりですよ。 「遠赤外線、してきたよ」 先生が意地悪を言う。 「遠赤外線は、美味しいご飯が炊けるんだから!」 私は顔を隠したまま言った。 「知ってる」 先生は、私の頭を撫でた。 泣きたかった気持ちが大きくなりすぎて、涙が出ていた。 たぶん、先生も分かっている。 だから、優しく頭を撫でてくれてるのだろう。 「ごめん、意地悪言いすぎた」 先生が謝ってくる。 でも、おバカな私がいけないんであって、先生は悪くない。 そう言っても、先生は謝ってくるだけだった。
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