契約

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隣の楽屋には居ない。 先生を探すと、ステージの上に座って誰も居ない客席を見ている先生を見つけた。 「見つけた!!」 私は先生の隣に座る。 「先生、さっきはごめんなさい」 「やっと泣き止んだ?」 「うん」 「そっか」 先生はそう言うと、また客席の方を向いた。 私も同じ事をしてみる。 「ここでライブしたけど、やっぱり狭かった」 先生が言った。 「うん」 私は頷くだけで、先生の話を聞く。 「でも、一人一人の顔が見れて、すげえ良かった」 「うん」 「夢叶の顔も、よく見えた」 「・・・うん」 目が合った気がしたのは、気のせいじゃなかったんだ。 「今日は、ヤバイくらい楽しかった」 「うん!」 「何でか分かる?」 先生が急に私の方を向いた。 「・・・え?」 楽しかった理由? そんなの分からないよ・・・。 答えに困っていると、先生が言った。 「夢叶が居たから。 夢叶が、俺を見ててくれたから痺れた」 そう、笑顔で言った。
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