携帯

5/24
前へ
/988ページ
次へ
「とりあえず」 そう言うと、圭太さんは私の背中を押し、3人が座っているテーブルの前に座らせた。 谷さんの顔は、絆創膏だらけ。 しかし、可哀想だと思えない。 私の前にはお爺さん。 「連れて来ました」 圭太さんはそう言うと、私の隣に正座して座った。 あ、この人・・・前に居る人は社長さんだ。 直感で分かった。 「立花夢叶さん」 社長さんが口を開いた。 「はい」 私は簡単に答える。 社長さんは、胸ポケットからケースを出すと、私に名詞を渡してきた。 「社長の近藤と言います。 この度は、うちの社員が申し訳ない事をしたようで、本当にすまなかった」 と、頭を下げてきた。 予想外の展開。 まさか、社長さんに謝られるなんて、思いもしなかった。 「社長さんが悪いわけではないです」 思っていることを口に出した。 優しそうな社長さん。 でも、副社長さんと先生を黙らせられるのは、社長さんしか居ないってヤスさんが言っていたよね? って事は、怒ると怖い人なのかもしれない。 しかも、圭太さんの慌てようは凄かったし。 「体調はどうですか?」 社長さんから聞かれる。 「最悪です」 私が言うと、社長さん以外の人の視線が刺さった。 圭太さんが、私の事を肘で突く。 無礼だって事でしょ。 分かってるよ。 分かっててやってるんだもん、気にしない。 私の機嫌は、まだまだ最高潮に悪いです。
/988ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1095人が本棚に入れています
本棚に追加