携帯

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「これは、立花さんの祖父母に渡したいと思っているものです。 ぜひ、私達を連れて行ってもらいたい」 社長さんが言った。 おじいちゃんとおばあちゃんに渡す物? 中身を確認して、テーブルに置いた。 「大切な娘さんを亡くした辛さは、私には分からない。 だけど、私に出来ることは、このくらいしかない」 そう私に訴えかける社長さん。 封筒の中身は、一万円札が大量に入っていた。 「これを、なんて言って渡すんですか? 私に全て話せって事ですか?」 あんなことがあった事を、二人にも話さないといけないの? それから、これを渡すってことだよね? 「お金で解決しようとするのは勝手だけど、私の気持ちとか、そういうのはどうなるんですか? 言いたくなくて、言えなくて、こうやって我慢して生活してきたんですよ!?」 私は封筒をテーブルの上に力強く置いた。 「これ以上、私の中に入り込んで来ないでください! やっぱり、携帯も、契約も、無かった事にしてください!」 私は勢い良く立ち上がって、呼び止められても無視をした。 そして、宴会場を出た。 一人になりたかった。 だから、部屋に戻らずに、お気に入りの場所に向かった。
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