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先生は何を言うでもなく、私の近くに居るだけ。
座っているのか、立っているのかも分からない。
風が吹くと、先生の匂いに包まれ、落ち着いた。
一人じゃないけど、一人の時間を堪能する。
心の中が真っ白にリセットされるまで、目を閉じていたかった。
しかし、
「夢叶、雨降ってきたから戻るぞ」
先生の声がする。
だけど、嫌だ。
「夢叶、具合い悪いわけじゃないよな?」
先生の声がすぐ近くに来た。
「先、戻ってて」
「ダーメ!!」
「まだここに居たい」
「雨ひどくなる前に戻るぞ」
先生は、先輩と違って、強制的に連れて行くことはしない。
私は黙り込んだまま、立ち上がる事はしなかった。
雷が鳴り始め、雨脚が強くなってくると、私は仕方なく立ち上がった。
まだ、気持ちが晴れない。
だけど、先生の後に付いて部屋に戻った。
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