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「欲しくない!」 「いやぁ、そこをなんとか」 「夢叶、なんとしても金を減らそうとしてるだろ」 先生が横目で見る。 「あ、先生の誕生日はいつですか?」 「おい、俺の質問に答えろ!」 それから二人は、噛み合わない会話を繰り返した。 終わりが無い会話。 「もう帰るぞ」 先生は車のエンジンをかけた。 結局、封筒の中身は変わらない。 ため息をつくと同時に、車が走り出した。 「夢叶、俺の誕生日は9月7日だから」 先生が言った。 「ふーん」 「うわ、反応薄すぎるだろ」 私は封筒とにらめっこ。 「先生は誕生日プレゼント、何がいいですか?」 「夢叶!!!」 「はいはい」 私は聞き流す。 「俺、可哀想」 先生が落ち込んだ。 「嘘だよ」 先生が面白くて笑った。 「もっと優しくしてよ」 「うん、ごめんね」 「許す!!」 機嫌が直り、足取り軽く旅館の部屋に戻った。
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