社長

11/22
前へ
/988ページ
次へ
「明日、俺の誕生日なんだ」 先輩が言った。 「・・・誕生日?」 明日、先輩の誕生日だったんだ。 「欲しいものがあるんだ」 「うん」 先輩の欲しいもの。 先輩が一番喜ぶもの。 私は先輩の言葉を待った。 「一回だけでいいんだ・・・。 あんたと、キスがしたい。 強く抱き締めさせてほしい」 先輩の声が震えている。 先輩・・・。 胸が痛い。 先輩の気持ちが痛いくらい伝わってきて、涙が止まらなくなった。 先輩がこんなに想ってくれているなんて・・・。 私は服の胸の部分を強く掴んだ。 痛い・・・苦しい・・・。 きっと、私よりも先輩のほうがいっぱい苦しいんだろう。 私の何倍も・・・何倍も・・・。 「明日・・・必ず・・・先輩に会いに・・・行きます・・・」 先輩の願いを叶えるために。 私はそう伝えた。
/988ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1095人が本棚に入れています
本棚に追加