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「げほっ…、げほっ…。」
「おかえりなさい!!祥ちゃん!」
ホコリが舞って彼が咳き込んでるのもお構いなしに、強く抱き付く。
「どうしたんだよ~、花寿。」
「怖かったの!近くで爆発音が聞こえたから…奴等がここまで来たかと思って…。」
「…へへ、そいつならさっき俺がやっつけたよ。」
「え…?」
祥ちゃんは目に付けていたゴーグルを外し、近くにあったテーブルに置く。ゴーグルを付けてなかった顔のほとんどの部分は黒く汚れている。
ぐしゃぐしゃになった髪の毛もそのままで水を飲みに立ち上がろうとしたが、それを俺が抱き着いて阻止した。
「俺、今汚いよ?」
確かに今の彼は《戦闘用》の服装をしていて、服は真っ黒に薄汚れて汚いし、少しでも軽く叩くと煙が服から出てくる。
「…火薬臭い…。」
「仕方ねぇよ。もうこれは染みついちまってる。…服にも、体にも…。」
悲しそうな顔でそう言っう祥ちゃん。
そんな祥ちゃんの腕に絡まり、服の臭いをうんと嗅ぐ。
火薬と煙と血の臭い。鉄の臭いだってするし、土の臭いもする。
「おまっ、汚いって…。」
「でも…俺はこの臭いが大好きなの…。だってこれは祥ちゃんの臭いだから…。」
そう言うと祥ちゃんの顔がみるみる赤くなっていった。
「んふふ、照れてるの?」
「うっせ…。ほら、鼻に黒い汚れが付いちまったじゃねーか。」
そういって祥ちゃんは手袋を外し、手で俺の鼻を拭く。
「大好きは…嬉しいけど、こんな臭いが俺の臭いだなんて何か複雑だなぁ…。」
「んふふっ…。嬉しいくせに…。」
「…、あーっ、もう!!可愛すぎだろお前!!!」
ぎゅうっと抱き締められる。さっきとは違う心臓のバクバクが鳴り止まない。
「…んっ。」
祥ちゃんの唇が俺の唇に当てられて、優しいキス。
「…栄養補給。」
そう言って顔を真っ赤にした祥ちゃんは立ち上がり、井戸のほうに歩いていった。
「…んふ、祥ちゃん大好き!!」
少し大きめの声でそう言うと祥ちゃんはさっきより顔を赤くして振り返って「うるせぇ!」って言ってきた。
こうゆうときが幸せだ。
祥ちゃんがいるから俺は生きていける。
祥ちゃんがいなかったら俺はいない。
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