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「明日なんて……来なかったら良いのに」
呟かれる言葉。
その声は空の暗闇の中に力無く吸い込まれ、虚しく消えていくのみだった。
誰も聞いていないと分かっている中で放たれたその言葉は、少女の本当の気持ちを表している。
出来ることなら、生まれてから今までを無かったことにしたい。
いや、むしろ生まれる前に戻して、別の人生を歩みたい。
少女の心の奥底から湧き出るその想いは、こんな夢見心地な世界の中では開放的だった。
人に言えるような話題ではないし、話せる相手もほとんどいやしない少女にとっては、今の一人のこの瞬間が最高に気持ち良かった。
このまま本当に時が止まって、明日が来なくなればいいと、そんなことを思ってしまうほど、少女はこの一瞬一瞬に没頭していた。
だが、
そんな、少女一人の静かなひと時がシクシクと流れ続ける中、
異変は突如として引き起こされた。
ゴゴゴゴと鳴る低い音。
遠くから徐々に大きくなって聞こえてくる。
まるで絵をぶち壊したかのようなその事態に、少女は思わず立ち上がった。
夢の終わり。
幻想的だったその世界に、現実が土足で踏み込んでくる。
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