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「……何?」
少女は訝しさに表情を歪めながら、心臓を手で押さえつけた。
バクバクと凄まじい速さで振動するその鼓動は、これが只事でないことを体が感じ取っていることを示している。
少女は、心臓部にやっていた目をもう一度空へ向けた。
星は相変わらず綺麗だったが、先ほどまでのように美しさは感じられなくなっていた。
音も明らかなほど大きくなっている。
星空の美しさはこの一瞬であっという間に不吉なものへと変わり、少女はゴクリと生唾を飲み込む。
すると、
その瞬間のことだ。
星空の下に広々と展開されている山々の奥の方に、いきなり赤いものが落ちてきた。
まるで隕石のようだった。
空から赤い弾丸のようにいきなりやって来たソレは、宙を凄まじい速さで進み、山の向こう側へと消えていく。
そして、
数秒後、派手な衝突音が聞こえた。
少女は目を白黒させながら、さっきとは別の意味で夢ではないかと自らを疑う。
しかし、
頬をつねっても目は覚めることはなく、あり得ないと感じながらも、半信半疑でこれは現実だと認識せざるを得なかった。
少女はしばらくその光景を唖然と見つめていたが、ふとした瞬間、足を動かす。
何があったか確認したい。
そう思った。
少女は屋根から飛び降り、その音のした方向へ駆ける。
場所はそこから山を2つ越えたくらい。
遠かったが、少女の足なら約一時間ほどで着いた。
その付近はずいぶん焼けこげていて、その中心にいくにつれて酷くなっている。
奥……中心部までいくと、焼けて灰と化した木々を押しのけ、一つの広場のようなものが見えた。
少女は意を決してそこに足を踏み入れる。
見てみると、そこには一人の男の姿があった。
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