5766人が本棚に入れています
本棚に追加
「恭司……君は一体……」
ユウカが尋ねてくる。
しかし、
それは恭司にも分からなかった。
何で、自分がこの技を使えるのか。
何故、"最初から知っていた"のか。
「分からない……。ユウカのそれを見て、俺は咄嗟に懐かしく感じたんだ。この技を……前にも使っていたことがあったような気がして……試さずにはいられなかった」
「…………」
「悪いことをしたと思っている。もちろん、からかうとかそういうつもりではなかったんだ。ただ……」
「…………」
場に変な空気だけが取り残される。
何気なく始めた腕試しで発覚したそれは、どちらにとっても、あまりにも大きすぎる事実だった。
戦いは自然と終わり、ユウカも恭司もその場に立ったまま、一言も喋らない。
しかし、
「これは……久しぶりに帰ってきたらずいぶんと面白いものが見れた」
その時、2人の背後から突如として声が聞こえた。
「……誰だ?」
恭司はいきなり現れたその男に容赦ない敵意を向ける。
パッと見た感じでは若そうに見えるが、肌の張り具合や服装などを見るに、おそらくは40ほどの歳だろうか。
平均的な身長だが、体つきは異常にしっかりしている。
筋肉がはち切れそうなほど膨らんでいて、服がパンパンになっているほどだ。
そして、
このヒシヒシと伝わってくる圧倒的な存在感。
おそらくは武芸者。
それも……かなりのレベルだ。
「そう睨みつけないでくれ。何も危害を加えにきたんじゃない。ただ家に帰ってきただけだ」
「家に?」
恭司はユウカを見た。
ユウカは頷いている。
どうやらそういうことらしい。
「私の……お父さんです」
最初のコメントを投稿しよう!