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「な、何この人……」
男は地面に背中から減り込む形で仰向けに倒れていた。
周りの木々も数本倒れている。
おそらくさっきの隕石のような勢いで犠牲になったのだろう。
男の周辺は地面がクレーターのように広く陥没し、木々だけでなく葉や枝、果ては虫などの生物まで全てが満ぐるりに吹き飛ばされている。
少女は思わず息を呑んだ。
現場を見てはいないものの、そこで発揮されたのであろう破壊力は見るも明らか過ぎていた。
一体どれだけの力で叩きつけられれば、ここまでの被害になるのかーー。
そして、
肝心のその男自体も、ひどく満身創痍だった。
体中に傷を作り、血だらけで意識を失っている。
最初はその破壊力によるものかとも思ったが、その割には傷口に斬られたようなものまで見受けられ、一概にそうとは言えなさそうだ。
衝突時によるものか、全身に酷い火傷が広がり、左肩には大きな穴が空いている。
出血の量ももはや池を作りかねないほど多い。
おそらく、この男はこうなる以前からこの状態に近かったのだろう。
一つ一つの傷の種類や深刻さもさながら、負傷している箇所があまりにも多すぎる。
また、
男の服は少女の見たことのないものだった。
街を歩いていても、こんな服を着ている人は見たことがない。
生地は薄く、涼しげには見えても防寒には決して向かないでろうことは容易に想像がつく。
濃い青を基調としたデザインだが、そこには血が所々に広く染み渡り、ドス黒いイメージを感じさせられた。
さらに、
その腰には長大な刀が一つ。
派手な装飾で、どことなく禍々しさを感じる代物だ。
歳は若そうだが、間違いなく堅気ではないだろう。
少女の表情に宿る訝しさもその深さを増す。
危険な香りは、とても濃く少女の鼻をついた。
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