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「……こういうときってどうすればいいか分かんないけど、とりあえず救急車?でも、この辺、車の通れる道なんて無いし……その間この人生きてられるかな?ってか、今の段階でもこれ生きてる?ヤバい。超面倒だよ。やっぱり見なかったことにして……」
無難な対策がつい口から零れ落ちる。
だが、その時、
男の体がピクリと動いた。
「あっ、生きてた」
男はゆっくり体を起き上がらせると、辺りをキョロキョロと見回す。
さらには自分の体を触っては見を繰り返し、最後に少女の顔に目を向けた。
一瞬、男と少女が見つめ合う形となる。
静かに風が吹き、小さく緊張が走った。
少女は何が起こるかと身構え、男は唖然とした表情だ。
少女は再び生唾を呑み込む。
すると、
その瞬間、
男はたった一言だけ呟いた。
「俺って……誰だっけ?」
「え?」
……それが、男と少女の最初の出会いだった。
物語はここから始まる。
この男が後に世界中を恐怖で震撼させるほどの大事件を引き起こすことなど、
この時点ではまだ、
誰も知るよしがなかった。
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