日常

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辺りには誰もいなかった。 いや、いなくなったと言ったほうが良いかも知れない。 先程までの地獄みたいな様子が嘘のように静まり返り、厚い雲の隙間からは太陽の陽射しが差し込んでいる。 その陽射しはある一点に注がれていた。 そこには小高い丘があった。 これをどう表現したらいいものか。 簡単に言うならば神秘的、なのかもしれない。 しかし、その丘に至るまでの地面には無数の何かが横たわっていた。 それが何かかは、すぐに分かった。 だが敢えて、今は無視をしてその無数の何かが横たわる中心を、目を細めて見つめた。 あれは、何だろうか。 何かがこちらに向けて、両手を差し出している。 そして小さな声で、 「一緒に、帰ろう」 と言うのだった。
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