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女性は慌てて起き、逃げようとしたが…時はすでに遅く、男は左手で女性の左手首を勢いよく掴んだ。
「は、離してっ!私が一体アナタに何をしたって言うのよ!?アナタは一体誰なのっ!?」
振りほどこうと力いっぱい女性は腕に力を込める…が、所詮は女性の力だ。
そう簡単にほどけるはずがない。
男は、自分が女性より優位にあるこの状況が楽しくて仕方がないようで、さらに口元を歪に微笑ませる。
そして男は、弾んだ明るい声で女性に囁くように話し始めた。
「何を君は当たり前のことを言ってるんだい?…僕だって君の事なんて知らないよ………」
「はぁ!?じゃあ何で私を追いかけて―――」
ドスッ
女性の体が少し揺れる。そう、まるで誰かとぶつかったように…少しだけ。
最初は何が起きたのか女性には分からなかった。
だが数秒後、自身に起きているある決定的な違和感に気がつく。
男の右手が自身の腹に深く突き刺さっていたからだ。
……しかし、それは正しい表現の仕方ではなかった。
正しくは、男の右手に持ったサバイバルナイフが女性の腹部に突き刺さっていたのだ。
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