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「………えっ?」
そのまま男は腹部に刺さったサバイバルナイフを引き抜かず、上下左右にゆっくりとえぐり始めた。
新鮮な肉と血が不愉快に音をたてながら、女性のしなやかな筋肉と筋肉をかき分けていくように腹部へと侵入していく。
「かぁっ……はぁっ……ぁぁっ……」
女性は声にもならない悲痛な声が口から漏れる。
想像を絶する激痛に口からは涎が、瞳からは涙が、鼻からは鼻水がだらだらと乾きかけていたアスファルトの上に滴り落ちる。
「どうだい?痛いだろう?苦しいだろ?助けてほしいだろ?でも残念。君は今日ここで死ぬんだ。…別に君に怨みなんてないし、誰かから殺しを依頼されたわけでもないよ?…理由は至って簡単な事だ。ただ、君は運が悪かった。ただそれだけ……だから、怨むなら『僕』を怨んでよね…バイバイ」
そこで男はようやくサバイバルナイフを勢いよく引き抜く。
そのまま男は、血がべったりとついたままのナイフをパーカーの中へと静かにしまった。
女性の体には力がなくなり、重力に逆らうことなくアスファルトに倒れ込んだ。
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