‐僕は力を手に入れた‐

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教室に戻る。 屋根と言える物が何一つ無い。 そして…。 誰もいない。 「帰っちゃったのかな?」 まぁ、普通に考えたらそうだ。 よく見ると、黒く焦げた壁に「今日は休校!家で連絡を待つこと」とチョークで書いてあった。 「家。帰ろっか、春」 「そうだね」 荷物は幸運にも無傷だった。 廊下に出ても、天井は無い。 まるでタッパーのフタを剥がしたかのようだった。 誰もいない、廃虚同然の校舎を出た。 変な気分だ。 自分がアビリティーを発現できたコト。 どこに来るかも分からなかった黒の翼がわざわざ僕たちの学校に襲撃に来たこと。 分からない。 同じ分からないでも、数学のテストが分からないのとは違う。 僕は、春と二人で家を目指した。 「ねえ、蓮君」 「ん?何?」 春から質問とは珍しいな。 「戦うことって、辛い?」 急にどうしたんだろう? 「蓮君が、鉄骨持って走って来たとき、なんだか辛そうだった」 そっか。 春にはそう見えてたんだな。 「なんだか、心の奥に何かあるみたいに…」 !!! そうか、そこまでお見通しだったか… 「僕にも、いろいろあるからね…」 「話せないなら、良いよ」 え…。 良いのか? 春がニッコリ微笑む。 「言いたくなったら、いつでも言えば良いよ!そのときは、一緒に聞いてあげるから!」 「ありがとう…」 嬉しかった。 春の言葉で少し、心が軽くなった。 ありがとう春。 いつかは、話すよ。 僕の過去の話…。
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