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広いホールに配置されたシャンデリアの蝋燭が夜の闇を退け絢爛豪華な衣装を身に纏った女性達は男性のエスコートで頬を赤らめながら談笑を楽しんでいる。
この鹿鳴館では皆が皆シンデレラになるようだ。
グラスを片手に金髪の男と戯れあうあの白ドレスの女…確か場末の呉服屋の三女。
姉がたまたま良家に嫁入りしたからこういった社交場に顔を出せるようになったが、遂に呉服屋のプライドを捨てて洋装で男を漁りに来たのか。
蘭子は人知れずほくそ笑むと、すぐに営業スマイルを顔に張りつけて外交官に擦り寄る。
勿論、この大胆に開かれたスリットから露になる美脚を見せ付けながら。
「もし、父と一度会って下さったなら、デビッド様の夢も不可能では無くなるかもしれませんのよ?」
「本当ですか?」
「ええ、父は投資も趣味でいらっしゃるの…もしかしたらデビッド様の会社も…ただ…無償、ということは無いでしょうが…。」
そっと長く美しい指をデビッドの頬の輪郭になぞらせる。
艶やかなその表情に彼はゴクリと唾を飲み込んだ。
「な…なにを望むんだ?」
「私には分かりませんわ、それは父と相談して頂かなければ。」
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