第七章 †大会初日†

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 するとキラカは何かを思い出したかのように、三人に背中を向けて歩き出した。 「どこ行くんだ?」  すかさずその背中にクラッドが言葉を投げると、キラカはクルッと振り返る。 「ちょっと外の空気吸ってくる」 「自分の試合には戻って来いよ?」  キラカはクラッドの言葉に頷き、笑顔を浮かべると、左手をひらひら振りながら闘技場の外へ出て行った。 「あの笑顔信用して良いのか?ちゃんと戻って来っかなぁ」  心配症なクラッドは独り言を呟きながらエルナとシークの元へと戻る。 「キラ君って本当に天然なのね」 「エルナあいつの事好きなのか?」 「なっ!」  さっきからため息ばかりのエルナに、シークのデリカシーの無い言葉が刺さる。  エルナは思わず目を丸くして口をパクパクさせたが、暫くすると落ち着いたのか、深いため息を吐いた。 「あのねぇ、普通女の子が男の子に顔をあんなに近づけられたら好きじゃなくても赤面くらいするわよ。大体ねぇ、シー君は…」  エルナは女心の分からないシークに説教を始め、そんな中、意外にもクラッドだけがエルナの女心とやらを理解し、キラカが戻って来たら良く言い聞かせようと頭をフル回転させているのだった。
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