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「痛ってぇ」
男子生徒は打たれた後頭部をさすりながらエルナに振り返った。
エルナは気絶させるつもりで攻撃したにもかかわらず、痛がってはいるようだが、何とも無いかのように立っている彼に驚いて目を丸くする。
「普通に立ってるなんて、どんだけよ…」
エルナはため息を吐くと、再び戦闘体勢に入る。
「エルナちゃん結構乱暴なんだなぁ。こっちもそろそろ本気で行くぜぇ」
そう言うが早いか、男子生徒は既にエルナの足下に入り込み、彼女の腹に拳を叩き込んだ。
エルナはとっさに身体を後ろに逸らし、衝撃を少なくしたが、それでもその華奢な身体に彼の拳は重かった。
「うっ、げほっごほっ」
地面に手を着き咳き込むエルナに、男子生徒は嬉しそうに口元を吊り上げる。
「ごめんなぁ、手加減して殴ったつもりだったんだけどよぉ」
だが次の瞬間、その巨体はゆっくりと傾き、男子生徒はにやついた表情のままその場に倒れ、砂埃が舞う。
「ふん、何が手加減よ。力一杯殴ったじゃない!」
先程まで苦しそうに咳き込んでいた筈のエルナは、いつの間にか男子生徒の後ろに立っていた。
エルナはうつ伏せに倒れたまま動かない巨体を一瞥すると、会場を後にした。
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