第七章 †大会初日†

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 もう駄目かと思われたエルナの勝利が三人を沈黙で包む。 「今何が起きたんだ?エルナ腹平気なのか?あいつなんで倒れたんだ?」  最早クラッドはパニック状態である。 「キラカ、あれは光か?」 「あれは、あ、帰ってきた。エルナに直接訊きなよ」  キラカの視線の先には腹部をさすりながらこちらへ向かって歩いてくるエルナがいた。 「あれは幻覚よ。殴られたのは本当だけど、みんなに見えてたよりも上手く威力を殺せたから、咳き込むほどじゃないわ」 「じゃあ、あの咳き込んでたのは偽者で、本物のエルナは後ろにいたってことか?」  落ち着きを取り戻したクラッドは、頭の中を整理して言葉を並べた。 「そうね、殴られたのと同時に相手に幻覚を見せて、気付かない内に後ろから氷の塊を叩きつけてやったの。お喋りだったおかげでゆっくり準備できたわ」  一度目の氷は、時間的な問題で男子生徒を気絶させるに十分な大きさにはできなかったが、二度目の氷は、彼が幻覚にしっかりと騙されていたために時間に余裕があり、一撃で意識を飛ばすことに成功したのだ。 「ね、心配無かったでしょ?」  キラカは、見事な作戦勝ちを収めたエルナに唖然としている二人を見て笑った。
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