第七章 †大会初日†

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「ありがとう、教えてくれて。でもそろそろみたいだ。さっき気配がして、思わず飛び出して来たんだ」  キラカの言葉にリョクは黒の瞳を大きく開く。 「ならば我が…」 「死ぬよ。適わなかったんでしょ?」  キラカはリョクの言葉を遮るとローブに隠れた彼の右腕を見た。 「見せて」 「無駄だ。完全に焼失している」  それでもキラカはリョクの右腕に手を掛け、ローブを捲り上げた。 「………」  その右腕は、リョクの言う通り肘から先が焼け落ちてしまったかの様に、傷口は焦げて固まっていた。 「言ったであろう、お前にも無理だ」  だがキラカは黙って切断面に左手を翳す。 「ごめんね。全部僕の所為だ」  小さな声でそう言って、翳していた左手を引っ込めた。  赤く焼け焦げていた断面は腕こそ元には戻らないが、彼の本来の色である緑色を取り戻していた。 「感謝する。痛みが無くなった」  リョクは無表情、だが嬉しそうに自分の腕を見下ろした。 「君は何もしなくていい」  キラカの言葉にリョクは首を横に振った。 「そうはいかない」 「今度は腕だけじゃ済まないかもよ?」 「案ずるな。死など恐れ…」 「僕が嫌なんだ!僕の所為で誰かが傷付くなんてもう嫌だ!」
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