第七章 †大会初日†

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 キラカはリョクが言葉を言い終える前に声を荒げた。 「…お前の所為ではない」  しかしリョクは驚いた様子もなく、父親のように優しくキラカの頭を撫でると、先程までの勢いは消え、静かに萎れた。 「…ごめん怒鳴ったりして。でもリョクは手を出さないで欲しいんだ」  落ち着きを取り戻したキラカは懇願するようにリョクを見上げた。 「分かった。だがこれだけは言っておく。何時でも帰る場所はある。お前が望むのなら我が側にいよう」  リョクの顔は無表情だが、キラカには優しく笑ったように見えた。 「ありがとう」  リョクはキラカの頭からそっと手を離すと、ローブを纏い直し、去って行った。  キラカはその後も闘技場には戻らず、リョクと別れた場所で木に背中を預けていた。  どうして此処が分かったんだろうか?でもあの人は僕の顔を知らない、単なる偶然だろうか?時も忘れて思考を続けるが、ふと大会中だった事を思い出し、慌てて闘技場を目指して走り出すのだった。 …………………  キラカが戻ると、三人は変わらず談笑を楽しんでいる。 「おぅキラカ!シークの試合凄かったぜ?」  クラッドはキラカの顔を見るなり立ち上がり、笑顔を見せた。
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