第七章 †大会初日†

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「…誰もいねぇのかな?」  三人が肩を落として店内に背中を向けたその瞬間、キラカだけがピタリと足を止めた。 「どうした?」  シークとクラッドは彼の行動を不思議に思い立ち止まる。すると、薄暗い店の奥で動くモノを見つけた。 「誰かいる」  キラカが静かにそう言って、その何かを見据えると、少しずつそれはこちらに向かっていて、遂に姿を現した。 「…いらっしゃい」  腰の曲がった老婆は、一番近くにいたキラカを見上げてそう言うと、しわくちゃの顔を綻ばせた。 「店長さん、ですよね。僕らお腹空いちゃって」  今のキラカに先程の鋭さは無く、にっこり笑って自身の腹をさすった。 「おやおや、じゃあこっちに座りなさいな」  そう言って老婆は三人を店の奥のテーブルへ案内した。  テーブルには小さな花が生けてある白い花瓶が置いてあり、今朝水を取り替えてもらったのだろうその花は生き生きとしていて、寂れた店内には馴染めずにいた。 「今準備するからね」  老婆は嬉しそうに微笑むと厨房へと消えていった。  数分もしない内に店内は肉と野菜の香ばしい匂いでいっぱいになり、クラッドの腹が焦れったく音を立てる。 「やべ、すっげーいい匂い」
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