第七章 †大会初日†

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 そんなシークの浮かない表情にキラカは箸を止めた。 「そんなに強いの?」  シークはキラカの主語の無い言葉に一瞬眉をひそめたが、すぐに理解すると、一度椅子に座り直してから口を開いた。 「ヒス・カーマイン。かなりの実力者で、裏では殺しもやってるとか。あくまでも噂だがな。兎に角危ない奴だ」  キラカはふーんと言いながら皿に残る最後の一口を口に運んだ。 「なっ!」  空になった皿を目にしたクラッドとシークは怒りと悲しみで震えた。  キラカはクラッドとシークが会話している間も、シークがキラカの質問に答えている間も(クラッドでさえも箸を止めていたのにも拘わらず)休むことなく箸を動かしていたのだ。 「お前な…、一人分を考えろ。クラッドは兎も角俺は二口しか食べてないぞ?」 「待てよ、俺だってそんなに食ってねぇぜ?」 「ははは、ごめんね」  キラカは苦笑いを浮かべながら左頬を掻くと、あっそろそろ時間だ!と言いながらそそくさと席を立った。 「あいつって意外と大食いなのな。あんなに細ぇのに」 「あぁ、にしても腹が空いたな」  二人はキラカの出て行った扉に溜め息を吐くと、鳴き止まない腹をさすった。
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