第七章 †大会初日†

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 自身の試合を待つ者達が集まる控え室にいた金髪の少女は、本日何度目か分からない溜め息をまた一つ吐き出した。 「勝てるのかしら」  エルナは、アズール火山でのキラカ、本日一試合目でのキラカを思い出し、彼の未知なる実力に頭を悩ませていた。  恐らく、いや、間違い無く彼の方が実力は勝っているだろう。ならば出来るところまでやればいい。  そうエルナは気持ちを固めると、椅子からスッと腰を上げ、会場へ続く廊下へと足を踏み出した。 ………………… 「そろそろだよな」  シークは手に持った包みを開きながら呟く。 「だな」  同じくクラッドも包みを開き、相槌を打つと、顔を出したそれにかぶりついた。 「どちらが勝つと思う?」  シークは会場に並ぶ金と銀の二つの頭に目を留めたまま、ハンバーガーを頬張るクラッドに問いかける。 「ひょっひょはへ(ちょっと待て)」  彼は以前シークに言われた事を気にしているのか、急いで口の中の物を飲み込んだ。  言われたことをきちんと守る。意外と真面目なのかもしれない。 「ふぅ、オレはキラカだと思う。あいつ多分まだ本気出してねぇだろ」 「そうだな、特にキラカの魔術には油断出来ない。そうでなくてもエルナは戦闘派じゃないしな」  二人は会話が無くなると、満たし損ねた胃袋に黙々とハンバーガーを詰め込んだ。
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