第七章 †大会初日†

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 天井の無いそこには昼過ぎの太陽光が差し込み、心地よい風が吹いていた。 「何もしてこないのなら私から仕掛けるわよ!」  当初の予定では、キラカの攻撃をかわしながら隙を見つけて、少しずつダメージを与える筈だった。  だが、先制攻撃を仕掛けて来る筈だったキラカは、試合開始の合図が聞こえていないかのように、その場に立っているだけだ。 「っと」  キラカはエルナの放った光線を、右に体を反らすことによって避けると、彼女の後ろに回り込むように走り出した。 「そうはさせないわ!」  キラカの走った地面に浮かび上がる光の線をエルナは見逃さず、素早く水魔法によって地面を抉り、その線を途切れさせた。 「ばれちゃったか。やっぱりエルナに光は通じないね」  キラカは走るのをやめると今度は左手を真上に伸ばし、風を集め始めた。  一方、エルナは彼の次なる攻撃を避けるつもりなのだろう、いつでも動けるように身構える。 「手加減しないでよね」  エルナの真剣な声にキラカは苦笑いを浮かべると、上げていた左手を下げてしまった。  当然、集まり、肉眼でも見えるほど渦巻いていた風は、解ける様に見えなくなった。
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