第七章 †大会初日†

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「なっ!」  彼の予想外の行動に、エルナは思わず声を漏らす。  そしてそれは彼女の緊張を解き、無防備にしてしまった。 「…どうして?」  いつの間にか動かなくなった体に驚きを隠せず、理解出来ない現状に、エルナの声は不安で震えていた。 「僕の勝ちだね」  そう言ってキラカは視線をずらして、エルナに周りを見るよう促した。  そこには先程水魔法で断ち切られた筈の光輪がぐるりと彼女を囲っていた。 「え?いつの間に?」  しかしそれでもエルナには理解出来なかった。  彼に、地面に光輪を描く時間は無かった筈だ。 「降参してくれたら種明かしをするよ」  そう言いながら光の魔術、封印により動けないエルナを解放するべく、キラカは描かれた光輪を消した。 「動ける…。はぁ、私の負けよ」  エルナは自由になった体を確認すると、審判に歩み寄った。 ………………… 「つまり私はまんまとキラ君の策にはまったって訳ね」  エルナは悔しそうに唇を尖らせ、キラカは相変わらず微笑んでいた。  キラカは先程の試合、最初に描いた光輪を彼女に気付かれることは想定内だった。むしろ先に見せる事により、まさか見破られた魔術を再び使わないだろうと思わせたのだ。次に風を集め、その中に光の魔術を含ませる。太陽光の降り注ぐ今会場では、渦巻く風の中の光など肉眼では分からないだろう。
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