第七章 †大会初日†

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 そして風魔法を解く事で行き場を失った光の粒子をエルナの周りに円を描く様に降らすことにより、彼女は気づかぬ間に光輪に囲われ、自由を奪われたのだった。 「全然気付かなかったわ。でも、風と光がありなら、水と光でも出来るかしら?」 「出来ると思うよ。今度クラッドにでも試してみたら?」  キラカは冗談のつもりで言ったのだが、当の本人は本気らしく、悪戯を企む子供のように可愛らしいその顔をニヤリと歪ませた。 「エ、エルナ?」  そんなエルナに不安を覚えたキラカは、彼女の顔色を窺うようにその顔を覗き込んだ。 「ふふっ、楽しみね」  あー、エルナ本気だ。ごめんねクラッド…。種明かしということもあり、辺りに二人以外誰もいないその場所にはキラカの心情とは裏腹に、穏やかで優しい風が吹いていた。 …………………  観客席へと戻った二人を迎えたのは、シーク一人だった。 「クラッドは試合?」  キラカの問いにシークは手に持っていた包み紙を丸めながら首を縦に振った。  それを見たキラカはハンバーガーの包み紙だと分かると、いいな等と口走る。昼食を奪った張本人のその言葉に、昼食を奪われたシークの表情が歪んだ事は言うまでもない。
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