第七章 †大会初日†

30/39
前へ
/206ページ
次へ
「あ…」  どうやら昼食時の出来事を思い出したらしいキラカは慌てたように顔を引きつらせた。  何せ、料理の大半を平らげたにも拘わらず、一銭も払わずに二人を店内に残して飛び出したのだ、後ろめたい気持ちでいっぱいだった。 「ごめん」 「はぁ、お前あんだけ食っておいてまだ足りないのか!?だいたいな…」 「ね!始まるよ!」  エルナの言葉にキラカとシークは会場へと目を向け、そこに立つ二人の少年を見つけた。 …………………  三日間に分けて行われる今大会の初日最後となる試合は、クラッドとヒス・カーマインの試合だった。  昼を過ぎてからどんどん強くなる風がオレンジの髪を踊らせる。 「くくく、お前運悪いな」 「…おめぇ気味悪いな」  肩にかかるくらいの艶の無い黒髪は前髪も例外ではなく、血の様に赤い瞳をその隙間から覗かせることで、より一層彼を不気味に見せた。 「クラッド・バーミリオン対ヒス・カーマイン、始め!」  審判の声と共に、クラッドは一瞬にしてヒスの懐へと潜り込んだ。 「隙だらけだ、ぜ!」  そのまま炎を纏わせた拳をヒスの顎めがけて突き上げる。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

159人が本棚に入れています
本棚に追加