第七章 †大会初日†

31/39
前へ
/206ページ
次へ
 クラッドの拳は見事ヒスの顎へと決まり、彼は仰け反るように後方へ倒れた。  だが、クラッドはヒスが倒れると同時に素早く振り返り、黄炎を纏わせた腕をクロスさせて、次に来る重い衝撃に備えた。 「くっ!」  先程確かに倒れたはずの少年が目の前でニヤリと笑う。 「へぇ、黄炎か、楽しませてくれそうだなぁ」  クラッドはヒスをはねのけると、後方に跳び距離を取った。  その際辺りを見渡すが、分身のようなモノは無く、殴られた筈のヒスの顔も腫れてすらいない。 「闇か?たち悪ぃな」  するとクラッドは左回りに走り出し、右手から風魔法による鎌鼬を幾つも繰り出した。  だが彼の風魔法はまだまだ未熟で、ヒスはするするとかわしてしまう。 「風は糞だなぁ」  そう言ったかと思うと、彼はクラッドのすぐ後ろに既に腕を振り上げた状態で存在していた。 「ひゃはは!死ねぇ!!」  ヒスは右手に形成された闇の短刀をクラッドの首めがけて振り抜いた。 「ん?ざーんねん」 「はぁ、はぁ」  間一髪首を引き裂かれる事を防いだクラッドは呼吸を乱し、肩を上下させていた。 「おま、殺す気かよ」 「はぁ?当たり前だろ。死ぬのが怖いかぁ?」
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

159人が本棚に入れています
本棚に追加