第七章 †大会初日†

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「いたぶってから殺すってか?悪趣味だな」  口では強がってはいるが、傷口は浅いものの、己から流れる血に少なからず焦りを感じていた。  ヒスはそんなクラッドに再び接近し、長剣を振るうが、同じ手にやられる程彼は弱くはない。  クラッドは襲い掛かる黒い刃を黄炎を纏わせた腕で受け止め、同じく黄炎を纏わせた右足でヒスの横腹を蹴りつけた。  ヒスは衝撃により僅かにふらついたが、それ程ダメージが無いのか、変わらずに口元を吊り上げたままだ。 「受け止めたか。でも残念だったなぁ」  来る!そう思った瞬間、焦燥がクラッドの体を駆け巡り、それを追いかける様に腹部に激痛が走る。 「動けないだろぉ?」  ヒスはクラッドのすぐ目の前で、歪めた唇から言葉を発し、クラッドの腹に深々と刺さった黒い刃を引き抜き、大きく振り上げる。  だがクラッドはそのまま立っているだけで何も言葉を発する事なく、荒い呼吸に混じらせて吐血するだけだ。 「闇にもいろいろあるからなぁ、死ね」  ヒスは無抵抗なクラッドに向かって長剣を振り下ろす。  が、その切っ先が彼を切り裂く事は無く、立ち入った審判によって受け止められた。
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