第七章 †大会初日†

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「やめ!勝者ヒス・カーマイン!」  結果はクラッドの気絶によるヒスの勝利だった。 「…術が解けてるな」  ヒスは興味の無さそうな瞳で、運ばれて行くクラッドを見やると会場を後にした。 ………………… 「え!?終わりなの?」 「気絶って言ってたな。でも何時の間に怪我したんだ?結構な出血量だったが」  突如として終わってしまったクラッドの試合に二人は困惑した声を上げた。  しかし闇の魔術に惑わされ、真実を知らないのだから仕方がないだろう。  そんな中、キラカは静かに外していた指輪を着け直す。 「………」  そっと席を立つと、クラッドが休んでいるであろう救護室へと向かった。 …………………  観客席に座る、黒ローブをフードごと被り、顔の見えない男はギリギリと奥歯を鳴らし、苛立ちを含んだ声を出した。 「くそ!何故だ?術は完璧だったはずだ」 「あなたの術を知っている者がいるってことかしらね?」  男の声とは裏腹に、艶のある色っぽい声は隣に座る、同じく黒ローブに身を包んだ女によるものだった。 「知る者か…」  男の声からは既に苛立ちは消え、冷静さを取り戻していた。 「まぁいい。後は任せるぞ」 「私でいいの?」 「十分だ。あれをもう少し育てたい」  そう言うが早いか、男は女に背を向けて会場を後にした。
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