第八章 †大会二日目†

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 なかなかトイレから帰って来ないクラッドを気にしつつ、キラカは椅子から立ち上がった。 「キラ君もう試合?」  すかさずエルナが声を掛ける。 「うん」  キラカはそう言うとひらひらと左手を振りながら観客席を後にした。 …………………  控え室には既に、本日第一試合目の生徒達が学年問わず集まっていた。  部屋の隅に並ぶ椅子の一つに腰を下ろしたキラカは、自身の左手に着いた指輪を眺めていた。  一つ外そうか、それとも腕輪を外そうか?クラッドの試合からして、ヒス・カーマインは恐らく軽く優勝候補だと言える程の実力者だろう。だからといって負けるつもりは無いのだが。  最初は棄権してもいいだろうと思っていた。  だがシークがこの先当たることを思うと、シークには申し訳ないが彼の命の保証は出来ない。  気絶させてしまえば良い訳だし、それならば力を使いすぎる事もなく、怪しまれる事もない。  と、そこに第一試合が間もない事を伝える放送が入る。 「ふぅ、早めに済ませよ」  会場へと続く廊下を歩きながら小さく呟き、両腕を上に伸びをする。  その途中、キラカは背中に、裂けそうな程に口元を歪めて殺気送る、赤目の少年の気配を感じ、苦笑いを浮かべるのだった。
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