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「で、キラカ達って…」
クラッドが何か言おうとした時、急に教室がしんとして、何事かと辺りを見渡すと、アリス・バンジーもとい、アリス先生が教卓の前に立っていた。
「あら、まだ話しててもいいのよ。あと五分あるし」
アリスは左手首に着けた腕時計を見て言った。
「あと五分って言われてもな」
クラッドは引きつった笑みを浮かべた。
…………………
それから五分間、廊下から他クラスの生徒の話し声が聞こえる中、1‐Aの教室が騒がしくなることはなく、第一声を上げたのはやはりアリスだった。
「ではHLを始めます」
ぴったり五分後に口を開いたアリスは坦々と今日一日の流れを説明し、『では』と、それだけ言って教室から出て行った。
「はぁ、さっきの重い五分はなんだったんだ」
クラッドがため息を吐いて椅子の背もたれに倒れ込むと、キラカは苦笑いした。
「時間にルーズな人よりはいいんじゃない?確かにあの五分には痺れたけどね」
一年間担任。シークは嬉しそうだが、どうも苦手だ。早くも疲れが出始めている二人をよそに、シークは午後の魔術実技の授業に思いを馳せて、青紫瞳を輝かせていた。
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