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ぐるぐるぐる…
背後で腹の虫が鳴く。
「腹減った」
キラカが鳴き声のする方へ顔を向けると、弱々しく机に倒れ込むクラッドがいた。
「まだ10時だよ?」
「あと2時間なんて待てねぇよ」
クーリエ魔法学校の昼食は弁当を持参するか、食堂で食券を買うかに分かれる。クラッドは後者であるため、早弁など出来ないのだ。
キラカはそんなクラッドを見て苦笑いすると、ポケットの中を探った。
「あった。クラッド、これあげるよ」
クラッドがキラカの差し出した掌を見ると、そこには苺味の飴玉が乗っていた。
「キラカ、お前ってやつは!」
クラッドはキラカの優しさに触れ、歓喜している。
「しっ、クラッド、先生に気づかれちゃうよ」
キラカは此方に背を向けて黒板にチョークを走らせている教師を一瞥すると、クラッドに向き直って微笑んだ。
「飴一つじゃあんまり意味ないかもしれないけど」
クラッドはキラカから貰った赤い飴玉を頬張ると、嬉しそうに口の中で転がした。
二人の一連の遣り取りを静かに見守っていたシークは、つい上がってしまう口元を左手で隠すと、ノートを執る事を止めていた右手を再び動かし始めた。
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