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「そうだな。あれがクレバスの街だ。あそこは馬の飼育が盛んで、一家に一台は馬車がある」
「へぇ、シーク詳しいんだね」
シークがすらすらと隣街のことを話すので、キラカは関心して言葉を漏らした。
「まぁな。小さい頃父といろんな街を見て廻ったから、その時の事を覚えているんだ」
シークは当時を思い出しているのか、懐かしそうに青紫瞳を細めて微笑んだ。
「楽しかったんだね」
「え?」
「だって、シークがとっても嬉しそうに笑うから、楽しかったんだろうなって」
キラカは少し羨ましそうに首を傾げて微笑んだ。
「あぁ、楽しかったよ。父の事も大好きだった」
そう言うと、シークの表情が一瞬曇った気がしたが、すぐにいつものキリッとした表情に戻る。
「クレバスに着いたらまず馬車の確保だな。それから昼食をとって再出発だ」
シークがそう言うとクラッドは顔をしかめた。
「馬車なら一杯あるんだろ?なんで確保する必要があんだ?」
「念の為だ。俺の知識は10年前のものだからな。だから昼飯よりも馬車の確保が先だ」
シークはクラッドの鳴り止まない腹の虫の鳴き声を聞きながら言った。
「分かった。じゃあ街に着いたらパパっと馬車確保して、パパっと飯屋探そうぜ」
どうしても食から離れないクラッドに三人は顔を見合わせて微笑むと、早足で進むオレンジ頭に遅れをとらないように歩き出した。
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