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教室に入り、横開きの扉を閉める。
「はぁ、聞こえていないと思っているのか」
黒髪の少年、シーク・ウイスタリアは独り言を呟き、苛立ちを紛らわす様に頭を掻きながら、まだ自分以外誰もいないはずの1ーAの教室を見渡す。
「ん?」
窓際の前から三番目の日当たりの良い席に、短い銀髪の少年が机に突っ伏している。
「……俺が一番じゃなかったのか」
シークは教室の前方の黒板に張ってある座席表見て溜息をつくと、顔の見えない銀髪の右隣の席に座った。
「こいつ入学式にいなかったよな?左隣ってことは前に並んでたはずだしな」
一人呟きながら先程の入学式の事を思い出し、思案する。
座席は前から番号順であり、『1、2、3番』が並ぶと、『左、真ん中、右』となる。
「キミの言うとおり僕は式には出てないよ」
「なっ!」
「ははっ、驚いてる」
銀髪の少年は顔だけ此方に向け、頬は机に付けたまま黒髪の少年に薄紫の瞳を細めて微笑んだ。
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