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キラカが男と接触した頃。
「くそっ、キリがねぇ!」
クラッドは一人で十数匹はいるであろう魔物に苦戦していた。最早満身創痍だ。
そんなクラッドを嘲笑うかのように、魔物は口元を歪め、唾液で地面を黒くする。
「そろそろやべぇな」
徐々に動きの悪くなるクラッドに対し、魔物たちは一向に減らないどころか増えている様にすら感じる。
エルナはキラカに言われた通り一歩も動かず、一人戦うクラッドに次々と出来る傷を遠距離治癒魔法で癒やす。
もしエルナが治癒魔法を得意としなければ、今クラッドは立っていなかっただろう。
「頑張ってクラッド!」
「くっ、おらぁ!って、あれ?」
クラッドが最後の力を振り絞って剣を振り上げた時、先程までクラッドに殺意を向けていた魔物たちが掌を返した様に大人しくなり、次々と森の中へ消えていく。
「どうなってるの?」
「オレに訊くな。つか、疲れたー」
クラッドは四肢を投げ出してそのまま地面に倒れた。
「ねぇ、キラ君とシー君大丈夫かな?」
「オレの目が見えるって事は、少なくともキラカは無事だな」
エルナはクラッドの言葉を聞いて頷くと、口を開けたまま仰向けになっているクラッドの隣に腰を下ろし、何かを彼の口の中に入れた。
「ん?これは…、うっ!」
そう、エルナ特製疲労回復キャンディである。
「ありがとう」
エルナは悶えるクラッドに微笑みながら言った。
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