第五章 †アズール火山†

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 シークは再び自身の腹に触れる。 「闇を浄化したのか?」  闇の魔術によって受けるダメージは特殊で、光魔法によって浄化するほか無いため、最強・最悪の魔術と豪語する者も多い。また、浄化は高度な技量が必要だが、キラカは以前、教科書を浄化して彼を驚かせていた。  キラカは前を歩くエルナを一瞥すると 「そうだよ。本当はエルナにやってもらおうと思ったんだけど、思いの外ダメージが大きかったみたいだったから、急いだ方がいいと思って」  シークは、高度な魔術を難無く使うキラカをじっと見据えると思い切って質問した。 「お前、出身どこだ?」  キラカはシークの言葉に思わず立ち止まった。 「どこだって言われてもね」  キラカは明らかに動揺していた。それをシークは見逃さない。 「本当はどこかの有能な貴族かなんかじゃないのか?ライラックっていうのも偽名で…」  キラカは、自分の推理を次々と口にするシークを見て一瞬ポカンとすると、いつものように微笑む。 「違うよ。僕は貴族じゃないし、ライラックも本名だよ。出身はノクタリートの端っこの田舎町」  キラカはそう言うと、自分の早とちりに赤面するシークを見てくすくすと笑い、気付かれないように小さく胸を撫で下ろした。
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