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「わ、悪い。変なことを訊いた」
シークは赤くなった顔を隠すように早足に前進し、キラカに背を向けた。
びっくりした…。変な汗かいちゃったよ。キラカは集団の最後尾で小さくため息を吐くと、隙間無く生える木々によって出来た僅かな空を見上げた。
「出身ね…、どこなんだろ」
誰にも聞こえないその声は、森を抜ける風にかき消された。
…………………
森を出てすぐの所で待っていた馬車に乗り込んだ四人は一斉にため息をついた。
「終わったー、腹へったー、寝みー…」
クラッドは背もたれから溶けて滑り落ち、鼾をかき始めた。
そんなクラッドを一瞥すると、キラカは大きな欠伸をして、左手の指輪を2つとも外した。
「僕も疲れたな。ちょっと寝てもいい?」
「いいけど、何で指輪外したの?」
エルナは何もついていないキラカの左手を見た。
「うーん、思いの外魔力を使ったからね。外すと抑えてる魔力が身体に戻るから楽になるんだ」
エルナから返してもらった時つけなきゃ良かった。あぁ、身体が重い。同時に複数の魔術を使い、久々に普段使わない量の魔力を消費したことによる疲労が彼の気力を奪う。
キラカは瞳を閉じるとすぐに規則正しい寝息を立て始めた。
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