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馬車に揺られ早一時間。
辺りはすっかり暗くなり、クレバスの街の灯りが照らす中、馬車は進むことをやめた。
「おぉ!帰ってきた!」
馬屋前で帰りを待っていた男性は馬車を見るなり目を丸くして、慌てて駆け寄ると、中には四人の寝顔があった。
男性は一瞬、瞳を閉じ動かない彼らにギョッとしたが、寝息を聞いて安心したのか、ため息を吐いた。
「こんな所で寝てたら風邪ひくぞ!さぁ起きて店の中に入りなさい」
男性の声に目を覚ましたキラカは、欠伸をしながら未だ眠り続ける三人を見て静かに微笑んだ。
…………………
「本当にいいんですか?」
「あぁ、遠慮せずに泊まって行きなさい」
シークが申し訳なさそうに尋ねると、男性はニッコリ笑ってそう言った。
男性が部屋から出て行くと、キラカ、シーク、クラッドの三人だけになった。勿論エルナは別の部屋にいる。
「泊めてもらえて良かったね。これからクーリエまで歩いて帰ると思うと、気が重かったよ」
そう言うと、キラカはふかふかのベッドに倒れ込んだ。
「そうだな。あの人は昔から優しかった。変わってなくて良かったよ」
「でもあのおっちゃんシークに気づかないな」
シークはクラッドの言葉に苦笑いした。
「しょうがないさ、十年も前だ。覚えてる方がおかしい」
キラカはシークの少し寂しそうな横顔を一瞥すると、突然ベッドから起き上がり、扉に手をかけた。
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