第五章 †アズール火山†

23/23

159人が本棚に入れています
本棚に追加
/206ページ
「なんで言っちゃうのさ」  嘘がばれてしまったキラカは、不機嫌そうに眉間に皺を寄せてシークを睨みつけた。  しかしその顔からは睨まれているという嫌悪感は感じられず、寧ろ笑いを誘うような可笑しな表情だった。  キラカのそんな顔を初めて見た三人は顔を見合わせて、声を上げて笑った。 「キラカっ、お前そんな顔出来るんだなっ!」 「キラ君いつもニコニコしてるから、そんな顔初めて見たよ」  クラッドは痛む腹筋を押さえながら更に笑い、エルナは涙目になっている。 「はぁ、いいもの見たな。それ本当に睨んでるのか?」  シークにとどめを刺されたキラカは遂に無表情になり、窓の外に顔を向けた。 「ほら、キラ君拗ねちゃったわよ?クラッドのせいね」 「なんでだよ!?シークのが一番ひでぇだろ!」 「俺のせいにするな」  キラカは聞こえてくる罪の擦り合いに深いため息を零した。 …………………  クーリエの街に帰ってきた四人は、クレバスに戻って行く馬車を見送る。 「自動で戻るってなんかすごいよね」  すっかり元に戻ったキラカは馬車の後ろ姿を見て微笑んだ。 「立ち直るの早いな」 「根に持って欲しいの?」  キラカはシークに優しく微笑みかける。 「い、いや、立ち直りが早いのはとても良いことだと思う」  シークは微笑んでいるはずのキラカに、引きつった笑みを浮かべた。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

159人が本棚に入れています
本棚に追加