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「なんで言っちゃうのさ」
嘘がばれてしまったキラカは、不機嫌そうに眉間に皺を寄せてシークを睨みつけた。
しかしその顔からは睨まれているという嫌悪感は感じられず、寧ろ笑いを誘うような可笑しな表情だった。
キラカのそんな顔を初めて見た三人は顔を見合わせて、声を上げて笑った。
「キラカっ、お前そんな顔出来るんだなっ!」
「キラ君いつもニコニコしてるから、そんな顔初めて見たよ」
クラッドは痛む腹筋を押さえながら更に笑い、エルナは涙目になっている。
「はぁ、いいもの見たな。それ本当に睨んでるのか?」
シークにとどめを刺されたキラカは遂に無表情になり、窓の外に顔を向けた。
「ほら、キラ君拗ねちゃったわよ?クラッドのせいね」
「なんでだよ!?シークのが一番ひでぇだろ!」
「俺のせいにするな」
キラカは聞こえてくる罪の擦り合いに深いため息を零した。
…………………
クーリエの街に帰ってきた四人は、クレバスに戻って行く馬車を見送る。
「自動で戻るってなんかすごいよね」
すっかり元に戻ったキラカは馬車の後ろ姿を見て微笑んだ。
「立ち直るの早いな」
「根に持って欲しいの?」
キラカはシークに優しく微笑みかける。
「い、いや、立ち直りが早いのはとても良いことだと思う」
シークは微笑んでいるはずのキラカに、引きつった笑みを浮かべた。
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