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夜が明ける少し前、銀髪の少年は閉じていた瞳を開く。
「……まだこんな時間か」
キラカは大きな欠伸をしながら台所へ向かい、インスタントのコーヒーにポットからお湯を注ぎ、シュガースティックを二本入れた。
白い湯気の立つそれに恐る恐る唇を近づける。
「熱っ!」
続けて氷を一つ入れて、かき混ぜ、今度は全神経をカップを傾ける事に集中する。
「…はぁ、見栄を張ってコーヒーなんか買うんじゃなかった。今度はコーヒー牛乳にしよう」
キラカは初めてシークと買い物に行った時に、猫舌兼甘党にも関わらず、第一印象が大事だという考えの下に、見栄を張って買ってしまったインスタントコーヒーをなかなか消費できずにいた。
漸くぬるくなったコーヒーを飲み終えると、身仕度を整え、部屋を出た。
…………………
早朝のため誰もいない道を歩き、寮に隣接する学校へ向かう。
「天気いいな」
穏やかな風に銀髪がさらさらと揺れる。
キラカは教室には向かわず、体育館の正面に来ると、猫の様に軽々と屋根に上がり、腰を下ろした。
小さくため息を吐くと、左耳に妖しく輝く赤いピアスを外し、ポケットの中にしまって、代わりに何の装飾も無い銀の指輪を取り出した。
「そろそろ完成させなきゃ」
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