第六章 †秘密の特訓†

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 クーリエ魔法学校の大会前一週間は、大会に備えて特訓しろという意味なのか、授業は午前で終わり、午後はそれぞれ自由に過ごすことができる。  この一週間は食堂が使えないという事を今朝知ったキラカは、昼食の食材を求めて市場に来ていた。 「おじさん、大根ちょうだい」 「あいよ、兄ちゃん自分で料理すんのか?」 「まぁね」  八百屋の男性の質問ににっこり笑って答えると、それを影から見ていた者がいたことには気づかず、次の店に移る。 「おばちゃん、鳥モモ肉ちょうだい」 「はい、鳥モモ。煮物かい?」 「はい」  キラカはにっこり笑ってお金を払うと、まっすぐに寮へと向かう。 …………………  部屋の扉に一瞬手をかけたが、小さくため息をこぼすと怠そうにその手を離す。  その際に買い物袋がカサカサと音を立てた。 「クラッド、何か用?」  キラカが声かけると、物陰から躊躇いがちにオレンジ頭が現れた。 「気づいてたのか」  クラッドは決まり悪そうに頭を掻きながら呟く。 「その頭、意識しなくても視界に入れば気付くよ。八百屋の辺りから附けてたでしょ?はぁ、お腹空いたなら入りなよ」  すると、その言葉を待っていたと言わんばかりに、クラッドの腹は大きな音を立てた。
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