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みんな胸を踊らせ、新たな門出にはどんな夢と希望が待ち受け、心を満たしてくれるのだろう。まだ早い入学式のためにあしらえられた制服に袖を通し、少し大きいなと感じたあの日から一年が経った。
一年を通して仲の良い友達をつくり、高校生活を謳歌している時期に到達した。
ドキドキの去年から親しみと穏やかさの中に落ち着いた楽しさがそこらに散らばっている高校二年生。そんな二年生が始まった
見知った顔がちらほら伺えて、みんな気の合うグループで喋っている。
僕はクラスの中に溶け込んでいる。溶け込んでいると言ってもグループの中にではない。友達がいない、孤立して、ただ呆然に窓の外の景色を見ることに時間を費やすことがぼくという存在として成立していて、それでいてそれが当たり前の日常だから溶け込んでいるんだ。
誰かとワイワイ会話をするということがぼくの中から綺麗に欠如して、ただ凡庸に時間を雲が風で流れるようにゆらりゆらりと費やす。
「みーやぎくんっ」
不意にかけられた声。あまりのことで、昼休みの穏やかな一時をいつものように堪能してしまった。
「おいっ!無視しんといてー」
その言葉に空を見ていた視線を彼女に移しかえて、その満面の笑みにぼくはぼーっとした感覚で「ごめん」と言った。
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