12集 夢見

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校門を出て、三日月の出てきた真夜中に夜風が俺の身体に当たる。 身体がなんだか軽い。少し機敏になれた感じがする。 「思っきり寝て身体を回復させてそれでもまだ煩わしい?」 「悪くはない……かも」 本当にスッキリして気持ちがいい。 「ただ、結局また明日明後日には元通りに」 生活リズム自体改善しなきゃ何も変わりやしない。 「あ、いいこと思いついた」 手のひらにポンと握り拳を置いて、俺の方を向く。 「なんだよ」 一呼吸置いて、じっと俺の目を見つめてから言い放つ。 「私、バイトしよう」 「ちょっと待て。まさかとは思うがお前、まさか」 家にくるつもりか、確かに他の従業員なんて雇ってはいないけれど。 「負担が減れば仕事も早く終わって早く寝れるでしょ」 彼女なりに、考えてくれた結果なんだとそは分かるけれど。 「あのな、そう簡単に言うが俺は認めないからな」 「えぇー」 悲観しているのか分かりにくい声をあげる彼女。 「仕込みに調理、皿洗い。その他色々をひっくるめて、まともに出来るのに5年はかかるし、素人の手が1人増えたくらいで」 俺だって、爺ちゃんと小学生の頃から猛特訓して今に至る、その過程は決して簡単な物ではない。 「それに、仕事中に寝たりでもされたら適わない」 唐突に寝たり起きたり、マイペースこの上ない人物だ。いつ寝られてしまうか分かった物じゃない。 「……」 彼女は、何も言わず俯いたままだ。 「いや……その。気持ちは有り難いんだけど、やっぱり俺は」 少しキツく言い過ぎてしまった。たこ焼き絡みの話になると、いつも加減が出来ない悪い癖だ。 「いいよ、別に」 「だけどね、ちゃんと寝なきゃ駄目だよ。1日8時間は寝ればいいらしいけど私は寝たりないくらいだし」 そもそも、俺だってまだ人に教えられる程じゃないってのもある。もっと自分が一人前としてやれたら違う答えも出せたかもしれない。 「だからまずはちゃんと寝る。いいスポット教えてあげるから」 コツンと額を小突くだけして、走っていってしまった。 「ありがとう……なんか悪い」 のんびり屋だと思っていたけれど、少し教わってしまったようだ。 「いいよ、別に。私の為でもあるし、もっと美味しいたこ焼き食べたいから」 マイペースな彼女のマイペースな回答。お前らしいと口元が緩んだ。 「またね」 「あぁ」 今度から、無理しすぎないように頑張ろう。
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