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それからというもの、末っ子のお姫様はその青年の事が気になって仕方ありません。
(あぁ、大丈夫なのかしら)
毎日、毎日、末っ子のお姫様は、海の上に出ては、海岸を眺めていました。
そんな毎日を過ごしている末っ子のお姫様を心配して、海の王様と5人のお姉様たちは、末っ子のお姫様に海の上へと行くのを禁止しました。
末っ子のお姫様は、もうどうしていいのかわからなくなって、青年の事が四六時中、頭から離れなくなってしまいました。
そして、思い付くのです。
昔々、珊瑚の里を越えたその先の、荒く素早く流れていく海流の先に、魚さえもすぐに死んでしまうとされる死の海域という場所に暗黒の魔女が住むと言い伝えられていたことに。
そこは誰も近づかず、行ったら最後、誰も帰ってこないとされる場所です。
そんな所に住む、魔女の噂はこの時代には、誰も信じていませんでした。
それでも、青年の事が心配な末っ子のお姫様は、行くことを決意しました。
そして、ある真夜中の事。
魚たちの寝静まった頃に、末っ子のお姫様は、城をこっそり抜け出しました。
「海の王お父様、お母様、お姉様たち、さようなら。私は必ず戻ってきます」
そう城に向かって残し、死の海域に向かうのでした。
珊瑚の里を越え、荒く素早く流れる海流をなんとか乗り越えた末っ子のお姫様。
荒れ狂う海流に、心も体もボロボロでした。
それでも、なんとか、暗く静かで、どんよりとした、死の海域に辿り着きました。
そして、そこには、噂通りの黒い黒い暗黒の魔女がいました。
「あら、久しぶりのお客さんだね」
その魔女は、にっこりと不気味に笑いました。
「人魚姫様ですね、お待ちしておりました。さぁさぁ、中へ」
末っ子のお姫様は、言われるがままに、その魔女について行きます。
中に入っても明かりは、アンコウの灯す一点のみ。
何とも暗い場所でした。
末っ子のお姫様は、突然怖くなりました。
後悔しそうになりました。
ですが、青年の事を思い出し、勇気を振り絞って、魔女に今までのことと、そして、末っ子のお姫様のある一つの願いを言いました。
「できますよ、この暗黒の魔女の力があれば、簡単に事は運びますよ」
末っ子のお姫様は、安心しました。
そして、末っ子のお姫様は、願いを暗黒の魔女に叶えてもらいました。
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