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気付けば、海岸の上。
尾びれの方を見れば、二つに分かれ、人間の足になっていました。
そう、末っ子のお姫様の願いは、人間になることです。
末っ子のお姫様は、暗黒の魔女が現実であったのだと思い、大変喜びました。
そして、青年を探す為に、末っ子のお姫様は、自分の足で陸地を歩き始めました。
ですが、歩くたびに、痛む足。
それは、暗黒の魔女が代償だと言っていたことでした。
それでも、末っ子のお姫様は、痛みに耐え、歩きます。
ひたすら、青年を探して歩きます。
だけど、どんなに歩いても見つかりません。
青年はどこにもいないのです。
金髪にエメラルドグリーンの瞳。
忘れられない、あの夜の事。
痛みと疲れから、走馬灯のように、駆け巡ります。
そして、末っ子のお姫様は、道端に倒れてしまいました。
「……大丈夫かい?」
聞こえてきたのは、そんな声でした。
それは、あの青年の声でした。
末っ子のお姫様は、泣いてしまいました。
「え、どうしたの!?」
そんな青年の声に、返そうと必死に言葉を出そうとするのですが、声が出ませんでした。
そう、これも暗黒の魔女が言っていた代償でした。
人魚姫の声は、誰よりもどんな生き物よりも美しい声なのです。
青年は、末っ子のお姫様が、声を失ってしまったことに気づきました。
「可哀想に、声が出ないんだね。僕のお城においでよ」
そして、お城にいくといろんなことが知れました。
青年は、この国の王子様。
そして、婚約者がいるそうです。
その婚約者というものが、なんとあの夜に王子様を助けたと少女だというのです。
(王子様を助けたのは、私なのに)
思っていても、声を出せません。
それでも、王子様の近くにいれることが、とても幸せでした。
「おいで、リリィ。美しいリリィ」
王子様は、いつも私の事をそう呼ぶのです。
リリィとは、王子様が名付けてくれた名前です。
人間界の私の大切な名前。
もう、人魚姫だった事の名前も忘れてしまいました。
それは、遠い昔の事のようでした。
思い出も、消えていきます。
唯一、痛む足だけが、人魚姫だったことを忘れさせません。
そして、月日は経ち、リリィとなった末っ子のお姫様は、いつものように王子様に呼ばれるのでした。
「おいで、リリィ。美しいリリィ」
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