約束の記憶

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「あいつらにも意見聞かないとな! 最近は退屈だったし、明日は日曜……ちょっと遠くにでも行くか?」 「うん、私は別に……皆が行くなら」 そっちの流れに話が行って、しばらく盛り上がる。それは本当に懐かしい時間。楽しい時間。 けれどそれも終わりを告げる。目の前には、分かれ道。 「それじゃな、リカ!」 俺は左に曲がりつつ、手を振った。 「うん……えへへ、シンジ。忘れちゃ駄目だよ結婚の約束」 茶化すようにリカがそう言うものだから、俺は思わず声を張り上げる。 「――! うるせーな。そんな昔の約束、無効だ無効」 その言葉を聞いて、リカは頬を膨らませる。フン、と鼻を鳴らしてそっぽを向く。 「また明日ね!」 怒っているのか良く分からないが、やや強めの口調で言いながらリカは歩いて行った。 徐々に小さくなっていくリカの背中。暗くなって行く空。 それと共に俺の視界も少しずつ、暗くなっていく。……終わるんだな。 俺はそれを受け入れて、流れに身を任せた。 有り難い。俺に、思い出させてくれて。ずっと、忘れていたよ……怖かった。思い出すのが。 けど決心した。行かなきゃ……。 正直言って、あの頃の俺達は狂っていた。少なくともまともな思考回路はしていなかったと思う。
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